C型肝炎薬:米ギリアド社が利益優先の「迂回・地域外販売防止」策――インド医薬品メーカーに拒否呼び掛け

中所得国ではジェネリック薬を規制
MSFは現在、開発途上国9ヵ国においてC型肝炎患者の治療開始を推進している。医師・患者双方にとって効果的な治療拡大を目指し、適正に価格設定された、完全経口の直接作用型抗ウイルス剤を求めている。しかし、ギリアド社やジェネリック薬メーカーとのC型肝炎薬「ソホスブビル」調達を巡る協議を通じて、ギリアド社が「迂回・地域外販売防止」策の実践を目指していることがわかった。この方策は、ソホスブビルの価格が法外に高く設定されている先進国と一部の中所得国において、同薬の低価格版を入手できないようにするためのものだ。ギリアド社は米国で、ソホスブビル1錠に1000米ドル(約12万1200円)の価格を設定しており、3ヵ月の治療費用は8万4000ドル(約101万8200円)に及ぶ。
MSFは3月18日、ギリアド社とインドの医薬品メーカーとの自発的ライセンス契約に関する考察を発表。この契約では、合計4900万人のC型肝炎患者が暮らす、タイ、ブラジル、中国、モロッコなどの中所得国50ヵ国は対象から外れた。契約は当該薬の販売先と原薬の調達元についてもさまざまな規制を課すものだが、最も警戒すべきは、特許および製品特許の極端に広い定義だろう。この定義では、前述の50ヵ国の患者は同ライセンスのもとで製造される低価格のジェネリック薬を入手できない。これは特許申請が却下され、上訴中や係争中であっても変わりない。ギリアド社はこれまでにインドで直接作用型抗ウイルス剤の特許を取得した例はない。
ギリアド社が、今回のライセンスの対象外とした中所得国向けに実践する“段階的価格設定”戦略は、これらの国で3ヵ月の治療費2000~1万5000米ドル(約24万2400円~約181万8200円)余りという高価格をもたらす可能性がある。英リバプール大学の研究によると、ソホスブビルは1錠につき約1米ドル(約121円)、3ヵ月の治療費にして101米ドル(1万2200円)で製造可能だという。移民や難民は薬を入手できない可能性
またこの迂回・地域外販売防止策では、治療対象の全患者が国籍証明書と滞在許可証の提示を求められる可能性がある。そうした証明書を持たないことがある移民、難民、社会的弱者が自動的に除外されかねない。しかしこうした人たちこそ、C型肝炎の最大の被害者であることが多い。さらに、治療対象者は、所定の薬容器を持参しなければ治療の継続が許されない。これは治療の中断、不成功の原因となるだろう。
MSF必須医薬品キャンペーンのエグゼクティブ・ディレクターであるマニカ・バラセガラム医師は 「ギリアド社の迂回・地域外販売防止策のようなものは前代未聞です。1企業の利潤を守るために、患者の個人情報や、治療の成否が脅かされるのです。ギリアド社は医療提供者に、限られた患者だけに薬を提供できるようにする監視策の導入を迫っており、これは重大な治療中断につながる恐れがあります。MSFは、ギリアド社とライセンス契約を結んだ全てのインド企業に、この計画の実践を受け入れないように求めます。受け入れてしまえば、当該薬を必要とする患者は、言語道断の規制やプライバシーの侵害なしには手に入れることができなくなります」と話す。
ギリアド社はパキスタンでMSFをこの方策の対象から除外している。しかし、この方策が悪しき先例となり、同社およびライセンス契約者のジェネリック薬メーカーが当該薬を販売する全ての国で導入するのではないかと危惧している。C型肝炎患者は世界に1億5000万人いると見られ、その大部分は中所得国を含む途上国の人びとだ。
MSF必須医薬品 キャンペーン政策分析ディレクターのロヒト・マルパニは「今は、1人でも多くのC型肝炎患者の治療と回復を目指すときであり、ギリアド社の動向は容認できません。ギリアド社が、一部の中所得国と、C型肝炎の疾病負荷の高い国から、最後の一滴まで利潤を搾り取ろうとあらゆる手を試みていることがわかります。その狙い通りになれば、大勢のC型肝炎患者が多額の治療費を払わなくてはいけなくなるでしょう。この人びとが取り残されないよう、私たちはギリアド社に速やかな方針転換とライセンス契約見直しを求めます」と訴えている。

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